生成AIを本格的に仕事で使い始めて、数カ月になる。
私は長くIT業界で働いてきた。最近はSalesforce関連の仕事をしていて、今年からClaude Codeを使い、AIエージェントと一緒にSalesforce向けのMCPを開発している。
最初は、かなり興奮した。
これまでなら数人の経験者を集めなければできなかったような仕事を、私一人とAIエージェントチームで進められる。
調査する。
設計する。
コードを書く。
テストする。
ドキュメントを作る。
問題を分析する。
次のタスクへ分解する。
どれも驚くほど速い。
「これは仕事が楽になる」
そう思った。
ところが、しばらくすると妙なことに気づいた。
私は全然、暇になっていなかった。
むしろ忙しくなっていた。
開発が速くなれば、次の機能を作る。
資料作成が速くなれば、もっと資料を作る。
調査が速くなれば、さらに別のテーマを調査する。
一つのPoCが早く終われば、次のPoCを始める。
AIによって処理能力が増えた分だけ、仕事の量も増えていく。
そのとき、こんな言葉が浮かんだ。
AI × 古い仕事モデル = 超高速な古い仕事
人間が10倍速く働けるようになったとしても、仕事の構造が同じなら、10倍楽になるとは限らない。
10倍たくさん仕事をする人になるだけかもしれない。
これは、昔の工場で機械の速度だけを上げて、ラインの構造を変えないのと似ている。
私自身、AIを使いながら、ものすごい速度で「ハムスターの回し車」を回し始めていたのではないか。
そう考えるようになった。
実際、AIとの開発では、単なるコード生成以上のことが起きている。
ある開発では、APIから作ったデータが画面上では正常に動かなかった。AIと一緒に原因を調べていくうちに、個々のバグを修正するだけでは足りないと分かった。
問題は、開発方法そのものだった。
そこで、公式手順やUI操作を観察し、人間が実際の操作を行い、AIがそのログや通信を解析する方式へ切り替えた。さらに、実装前に設計図を固定し、業務上の完了条件をevalとして定義する方式へ変えていった。
ここで初めて、
「AIで仕事を速くする」
とは違う可能性が見えてきた。
AIによって、仕事そのものを設計し直す。
たとえば100人月かかっていたSIプロジェクトを30人月にすることは効率化だ。
でも、本当に問うべきなのは、
「そもそも100人を集めるプロジェクトという形が必要なのか?」
なのかもしれない。
AIによって仕事が速くなったとき、人間はその余力で「もっと同じ仕事をする」のか。
それとも、その余力を使って、
何をやめるか。
何をAIへ渡すか。
どの役割そのものをなくすか。
どういうサービスに変えるか。
どういう組織ならAIと人間がうまく働けるか。
を考えるのか。
最近の私は、後者に強く惹かれている。
AI革命の本丸は、同じ仕事を高速化することではないのかもしれない。
仕事の単位、役割、組織、そして価値の生み方そのものを変えること。
そこまで行かなければ、私たちは最新のAIを使いながら、昔と同じ回し車をものすごい速度で走り続けることになる。

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