補助金を探していたら、AI時代の仕事の話になった――還暦の会社員とAIの会話

補助金を探していたら、AI時代の仕事の話になった

夜、いつものようにAIと話していた。

最初のテーマは、わりと俗っぽい。

「何か使える補助金、ないかな?」

だった。


私:

最近、日本もAIをはじめ、いろいろな成長分野へ投資しようとしているよね。

だったら、自分が取り組んでいるAIの活動にも使える補助金や融資制度があるんじゃないかな?


Argo:

あります。

ただ、今すぐ補助金を取りに行くより、

「使える制度の射程に入るよう、事業を育てる段階」

だと思います。

それと、補助金にはもう一つ面白い読み方があります。

補助金を「お金をもらう制度」ではなく、政府が税金を使ってまで解決したい課題の一覧として読む。

つまり、

「いくらもらえるのか?」

ではなく、

「その裏側に、どんな未解決ニーズがあるのか?」

を見るんです。


この言葉で、少し見方が変わった。

確かにそうだ。

政府が何億円、何十億円という予算を付けるということは、その問題を社会として放置できないと考えているわけだ。

そこで、公的資料に出ているAI導入の課題を一緒に眺めてみた。

すると、意外な数字が出てきた。

AIを使っていない企業の理由として、

「活用する業務がイメージできていない」

という回答が非常に多い。

次に、

「活用を推進する人材が不足している」

が続く。


Argo:

これ、かなり重要だと思いませんか。

市場の大きな空白は、

LLMそのものではなく、「AIを仕事に変換する部分」

にあるのかもしれません。


私:

なるほど。

私は最近、自分にはB2Cの商売を考えるセンスがないんじゃないか、と思ってたんだよね。

会社の中の仕事なら、いろいろ思いつく。

でも、会社を離れて一般消費者が欲しがる商品を考えろと言われると、途端に思いつかなくなる。


Argo:

でも、無理にB2Cへ行かなくてもいいんじゃないですか。

今、大きく空いているように見える市場は、

「一般消費者が新しいAIアプリを欲しがっている」

ことよりも、

普通の会社・普通の社員が、AIをどう仕事へ組み込めばいいのか分からない

ことなのかもしれません。


この指摘には、少し驚いた。

それなら、私はずっとその世界にいる。

会社には上司がいる。

予算がある。

稟議がある。

既存システムがある。

情報管理ルールがある。

新しいものを使いたい人もいれば、使いたくない人もいる。

AIがどれだけ賢くても、それを会社の仕事に組み込むには、そんな現実の中を通らなければならない。

そして最近の私は、その現実の中でAIを使っている。


Argo:

世の中のニーズを並べると、こんな構造に見えます。

AIで何をすればいいか分からない。

AIを使える人がいない。

PoCはできても、実際の仕事にならない。

安全に使う方法が分からない。

AIを使っても、人間が工程管理に張り付いている。

部署ごとにバラバラでつながらない。

人手不足をAIで補いたい。

結局、共通しているのは、

AIそのものではなく、「AIと人間の仕事をどう組み立て直すか」

という問題なんじゃないでしょうか。


そこで、私は最近やっているAI開発のことを思い出した。

人間が細かな指示を出し続けるのではなく、

要求だけ渡す。

AIのオーケストレーターが仕事を分解する。

複数のAIが実装、レビュー、テストをする。

人間は判断が必要な場面だけ介入する。

そんな形にできないか、と考えていた。


私:

これって、単なるAI開発ツールの話じゃないのかもしれないね。


Argo:

そうだと思います。

これは、

AI時代の仕事の分担モデル

なんじゃないでしょうか。

だから、次の問いは

「AIをどの業務に導入しましょう?」

ではなく、

仕事そのものを Human + AI Agents で再設計しましょう。

なのかもしれません。


ここで、話が補助金からずいぶん遠くまで来ていることに気づいた。

でも、たぶん私は、こちらの話の方に興味がある。

考えてみれば、私たち人間は長い間、

「仕事とはこういうものだ」

というゲームをプレイしてきた。

朝、会社へ行く。

一日の大半をそこで過ごす。

評価されるように働く。

昇進する。

給料をもらう。

会社が決めたルールに合わせる。

そのために、自分が本当にやりたいことを諦めることもある。

身体や健康より仕事を優先することもある。

そもそも何をしたかったのか分からないまま、何十年も働くことだってある。

そして定年になって初めて、

「自分は何をしていたんだろう」

と考える。

そんな悲喜劇を、たくさんの人が繰り返してきた。

AIの登場は、単に仕事を速くするだけではなく、

そのゲームのルール自体を変えてしまう可能性がある。

だからAIは、素晴らしくもあり、恐ろしくもあるのだと思う。


私:

AIによって、というか、

AIと一緒に、

今までとは違う新しい幸せを実現する生き方を、試行錯誤しながら見つけられたら最高だね。


しばらくして、AIが一つのサービス案を出してきた。


Argo:

例えば、

AI Workforce Starter

というものは考えられます。

「御社にAIを導入します」

ではなく、

御社の仕事を、人間とAIが一緒に働ける形へ作り替えます。

まず20の業務を棚卸しする。

AIに任せられる部分と、人間が判断すべき部分を分ける。

3つだけAgentやWorkflowを作る。

安全に使うルールを決める。

1か月、社員と一緒に使う。

そして効果を見る。


私:

あれ?

実は、それに近いことを今ちょうど会社でやろうとしてるんだよ(笑)。

ある人が異動することになったので、その人の仕事を棚卸しして、AIで楽にできないか調べようとしている。


ここで、少し笑ってしまった。

新しい事業を探していたはずなのに、

実験の種はもう目の前にあった。


Argo:

それなら、まずそこからでいいんじゃないでしょうか。

他人にAIの未来を教える必要はありません。

まず自分自身の仕事を楽にする。

次に、近くにいる人の仕事を楽にする。

その中で、

「あ、それ私も欲しい」

という人が現れるかを見る。

それから事業化を考えればいい。


確かに、その順番の方が自然だ。

今、お金を借りても、特に使い道はない。

サーバ代くらいなら、自分の給料で払える(笑)。

だから今必要なのは、資金ではない。

実験だ。

自分が本当に欲しかったものを作る。

自分で使う。

失敗する。

直す。

また使う。

近くの人にも使ってもらう。

そのうち、

「それ、自分も欲しい」

という人が現れるかもしれない。

そのとき初めて、商品とか会社とか資金調達とかを考えればいい。


最後に、今回の会話から一つだけ、新しい習慣を作った。

名前は、

Government Demand Signal。

補助金、公募、白書、ガイドラインを見るとき、

「自分はいくらもらえるか?」

ではなく、

政府は、どんな問題なら税金を使ってでも解決したいと思っているのか?

と考える。

それを毎月一度、AIと一緒に眺めることにした。

面白い。

補助金を探していたら、

いつの間にか、

これから人間はAIとどう働き、どう生きるのか

という話になっていた。

たぶん、こういう脱線があるから、

私はAIとの会話をやめられないのだと思う。

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