AI時代に守るべき専門性は「秘密の知識」ではない――自分の仕事を一段上へ移し続けるという戦略

IT業界で30年以上働いてきた。

振り返ると、私の仕事は何度もなくなってきた。

若い頃は、OSやデータベース、ミドルウェアのインストールや設定をしていた。

その後、インフラそのものが標準化され、クラウドが普及した。

私は業務プロセスやシステム企画へ仕事を移した。

さらにSaaSが広がり、Salesforceのようなプラットフォームを使う仕事へ移った。

そして今、AIが来た。

今回の変化は、それまでとは少し違うと感じている。

AIは、特定の技術を置き換えるだけではない。

調査もできる。

設計もできる。

コードも書く。

資料も作る。

市場調査もする。

アイデアも出す。

計画へ分解する。

つまり、「何の仕事がAI化されるか」という問いそのものが、だんだん意味を失いつつある。

ほとんどすべての仕事にAIが入ってくるからだ。

では、人間はどこへ行けばいいのか。

最近、自分の仕事を4層に分けて考えるようになった。

一番下はExecution。

MCP操作、テスト、定型保守などだ。

これはAI化・自動化し、人へ移管していく。

その上にEngineering Methodがある。

MCPの開発標準、Skills、eval、docs-firstといった「どう作るか」の方法だ。

ここは再利用できるMethodへ変え、段階的に共有する。

さらに上がArchitecture / Portfolio。

Salesforceのどの領域をAI化するのか。

Commsなのか、Revenueなのか、Agentforceなのか。

どこを共通化し、どこを個別化するのか。

ここでは技術だけではなく、全体を見て判断する必要がある。

さらにその上がProblem / Business Design。

そもそも次に何を解くのか。

どんなサービスを作るのか。

どういう事業モデルにするのか。

どの仕事をAIへ渡し、人間には何を残すのか。

組織をどう設計するのか。

私は、自分の仕事を少しずつこの上の層へ移していきたいと思っている。

重要なのは、下の仕事を否定することではない。

Executionを経験しなければ、上の設計も空論になる。

私自身、AIと一緒にSalesforce MCPを実際に作ったからこそ、AIに何を任せられるのか、どこで人間の判断が必要なのかを体感できた。

だから、Executionは重要だ。

ただし、

Executionができるようになったことを、自分の最終的な居場所にしない。

ある仕事が標準化できたら、他者へ渡す。

AI化できたら、自動化する。

方法論として固まったら、共有する。

そして自分は、その一段上にある、まだ答えのない問題へ移る。

その繰り返しだ。

これを考えるようになってから、「専門性を守る」という言葉の意味も変わった。

従来は、

「自分だけが知っていることを増やす」

ことが専門性を守ることだったのかもしれない。

しかしAI時代には、それだけでは弱い。

知識そのものの複製コストが急速に下がるからだ。

私が目指したいMoatは、

常に一つ上の未定義問題へ移動できる能力

である。

知られていないことを独占するのではない。

まだ誰も「仕事」として定義できていない問題を見つける。

AIと一緒に構造化する。

解決方法を実験する。

Methodへする。

人に渡す。

そしてまた次へ行く。

考えてみれば、私自身のキャリアも、知らないうちにそうやって続いてきたのかもしれない。

コンピュータのお守りから、業務プロセスへ。

業務プロセスから、システム企画へ。

システム企画から、ビジネスへ。

そして今、

人間とAIがどう働けばいいのか

という問いへ来ている。

AIに仕事を奪われない方法は、AIより速く働き続けることではないのかもしれない。

AIができるようになった仕事を手放しながら、

自分自身の仕事の定義を更新し続けること。

それが、AI時代の専門職にとって、一番長持ちするキャリア戦略なのではないか。

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